PR動画『重力波望遠鏡KAGRA』制作噺(ばなし) – JPN
PR動画『重力波望遠鏡KAGRA』制作噺(ばなし)
科学の一大ニュースがマスコミなどで取り上げられることってありますよね?そんな大ニュースの一つ「重力波」をテーマにしたのが、この動画です。動画の制作を始めたのは、2020年夏。ちょうど日本のKAGRA(かぐら)が連続運転を始めて間もない頃でした。KAGRAは、宇宙からの重力波を捉える「重力波望遠鏡」です(注)。
重力波とは
重力波?――それは、アインシュタインの「一般相対性理論」から導かれた予言です。ただ、存在するとしても気が遠くなるほど小さく、実際に検出するのはムリだと考えられていました。ところが不可能に挑戦する人はいるもので、一般相対性理論の発表から100年、ついに研究者たちの努力が報われます。アメリカの重力波望遠鏡LIGO(ライゴ)が重力波の直接観測に成功したのです(2015年9月)。ガリレオの望遠鏡での天体観測が天文学を一気に進めたように、重力波望遠鏡での観測が、宇宙の解明をさらに進めるのは間違いありません。そして日本のKAGRAの本格稼働――今後の成果に期待は膨らみます!こんな大ニュースをPRしないわけにはいきません!
いざ制作!
私たちは、さっそくPR動画の制作に乗り出しました。国立天文台には「動画制作の専門チーム」があります。わずか3人ですが、それぞれがプロの経験を持ち、ある程度のコンテンツ制作やネット配信なら自前でできます。コストもあまりかからず、研究者の監修を直接受けられるというメリットもあります。しかし、このとき国内は新型コロナウイルス感染症拡大の渦中。制作スタッフはテレワークを余儀なくされ、東京から岐阜県と富山県の県境近くにあるKAGRAへ、ロケに行くのもままなりません。制作には、できるだけこれまで撮り貯めてきた素材を使い、どうしても新たにロケが必要な部分は、現地に近い業者さんに外注することにしました。ところがロケ当日が近づくにつれ、日本海側には大雪の危険が。撮影クルーが無事に現場にたどり着けるのかハラハラしながら見守りました。
未来に向けて
とまぁ、いろんなことがありましたが、ようやく完成したのが、この動画です。KAGRAについてもっと詳しく!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それはほかの動画や書籍に譲ります。多くの人に重力波やKAGRAのエッセンスをお伝えしたい、というのがこの動画の目的です。そして、冒頭を「君へ―」としたのは、ターゲットを広く一般の人としつつも、とくに若い人々に重力波の魅力・天文学の魅力を知ってもらいたい、できれば研究にも参加してもらいたい、という願いからです。
おわりに
宇宙は広大です。まだまだたくさんの謎があります。重力波による天文学研究の扉は開かれたばかり。この先、どんな発見があるのかとても楽しみです。この動画がその入り口になれば嬉しい限りです。
ようこそ、重力波の世界へ!
(注)大型低温重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)は、東京大学宇宙線研究所、高エネルギー加速器研究機構、自然科学研究機構国立天文台を共同ホスト機関として、国内外の研究機関や大学の研究者と共同で2010年から建設が進められてきました。このKAGRAは、岐阜県飛騨市神岡町に設置されています。 本文へ戻る
関連リンク
文:塩谷保久(国立天文台 天文情報センター)
出典:国立天文台ニュース