令和3年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰を国立天文台の研究… – JPN
令和3年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰を国立天文台の研究者らが受賞
科学技術に関する研究開発、理解増進等における顕著な成果を収めた者を表彰する「科学技術分野の文部科学大臣表彰」の令和3年度の受賞者が発表され、国立天文台の研究者ら5名が受賞しました。
市民天文学プロジェクト「GALAXY CRUISE(ギャラクシークルーズ)」のメンバーは、同表彰の科学技術賞(理解増進部門)を受賞しました。受賞者は、天文情報センターの臼田-佐藤功美子(うすださとう くみこ)特任専門員、ハワイ観測所の田中賢幸(たなか まさゆき)准教授、小池美知太郎(こいけ みちたろう)特任専門員、柴田純子(しばた じゅんこ)事務支援員の4名です。受賞対象となった業績は「すばる望遠鏡ビッグデータを用いた市民参加型研究の普及啓発」です。
すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)で撮影された広大な範囲の宇宙画像には、おびただしい数の銀河が映り込んでいます。この中には「衝突銀河」と呼ばれるたいへん特徴的な形の銀河も多数含まれており、その形の特徴や数を調べることは、銀河の生い立ちをひも解き、その多様性の謎に迫ることにつながります。この膨大な数の衝突銀河の分類を、市民の力を借りて進めるプロジェクトが「GALAXY CRUISE」です。2019年11月のプロジェクト開始から1年半を経た現在、多くの市民が「市民天文学者」として参加したことで、科学的な解析に足りる分類数が集まりつつあります。近い将来、研究者と市民が一体となった「GALAXY CRUISE」を通じた研究から、すばる望遠鏡のビッグデータを用いた興味深い研究成果が生み出されることが期待できます。
このたびの受賞にあたり、プロジェクト統括の臼田-佐藤特任専門員は次のようなコメントを寄せています。「手探りで始めたプロジェクトでしたが、最新のデータにアクセスし、科学研究への貢献を楽しんでおられる市民天文学者が多いと実感しています。今後も、市民が科学活動に参加し、自身が科学の担い手であるという意識が広がるようなプロジェクトを続けていきたいと思います」
また、科学監修担当の田中准教授は次のように述べています。「市民天文学者の皆さんと一緒にいただいた賞だと考えています。これからも皆さんと一緒に研究を続けていくことを楽しみにしています」
銀河の分類サイトやビッグデータを扱うソフトウェアを制作した小池特任専門員は、「たいへん光栄です。今後も宇宙について楽しんでいただけるようなソフトを作っていきたいです」と述べています。
ウェブサイトのデザインを担当した柴田事務支援員は、「このような賞をいただきたいへん光栄です。今後も宇宙や科学をもっと身近に感じられるよう、分かりやすく楽しい表現をしていきたいです」と語っています。
また、国立天文台先端技術センターの小嶋崇文(こじま たかふみ)准教授は、同表彰の若手科学者賞を受賞しました。受賞対象となった業績は「電波天文用受信機の高感度化および広帯域化に関する研究」です。
小嶋准教授は、アルマ望遠鏡に搭載する受信機の開発研究をリードしています。その受信機の中でも最も高い周波数帯の電波を観測する「バンド10」受信機の開発に貢献し、加えて超伝導受信機の中核となる「超伝導ミキサ」の研究も続けています。また、現行の受信機よりさらに広い周波数帯域を一度に観測可能で、かつ感度も向上させた新しい受信機を開発中です。
今回の受賞にあたって小嶋准教授は、「栄えある賞をいただき光栄です。特に、高い技術力を有する複数名の研究パートナーとの緻密で地道な研究活動が本成果につながったと考えています。本研究では鍵となる技術の発案・実証ができましたが、次世代アルマ望遠鏡への実装に対しては道半ばです。今後も精進して研究開発活動に励んでまいります」と述べています。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を顕彰することで、科学技術に携わる者の意欲向上を図り、日本の科学技術水準の向上に寄与することを目的としています。科学技術賞(理解増進部門)は、広く国民の科学技術に関する関心および理解の増進等に寄与、または地域において科学技術に関する知識の普及啓発等に寄与する活動を行った者を対象としています。若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた若手研究者を対象としています。
表彰式は2021年4月14日、文部科学省(東京都千代田区)にて出席者数を制限した形で執り行われました。
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出典:国立天文台ニュース