この夏、望遠鏡で惑星を見よう—どこでも、いつでも、誰とでも— – JPN
この夏、望遠鏡で惑星を見よう—どこでも、いつでも、誰とでも—
夏休みが近づき、国立天文台の質問電話にも夏の星空に関する問い合わせが増えてきました。今年2021年はペルセウス座流星群(ペルセ群)の観察条件が良好のため、今後、メディア等でも詳しく取り上げられることでしょう。ペルセ群に比べると地味ながら、この夏から秋に向けて、天体観望の初級者からベテランまで多くの方々にお薦めの対象があります。星が少ない都会の夜空でも(どこでも)、晴れていれば特定の日を選ばず(いつでも)、気軽に誰とでも——それは惑星を楽しむこと。この夏、小型望遠鏡で楽しめる金星、土星、木星を紹介します。
小型の天体望遠鏡を使って自宅で楽しむ
都会の喧騒(けんそう)を離れて、夏には海や山へ家族で出かけ、満天の星の下で楽しめるペルセ群や天の川の観察といった雄大な天空のパノラマ・ショーを——、と計画されている方もいらっしゃることでしょう。その一方で、コロナ禍の影響や仕事などでその思いが実現できない方が、この夏は多いのではないでしょうか。地上の人工光により夜空の星ぼしの輝きは失われ、お住まいの場所からは満天の星を眺めることが難しいかもしれません。しかし都会でも、ビルの陰を避ければ、月や惑星を確認することができます。月は肉眼のみでもある程度は楽しめます。惑星は見つけられる明るさとはいえ、どんなに目を凝らしても点にしか見えません。
ここは「国立天文台望遠鏡キット」のような小型で扱いやすい天体望遠鏡の出番です。このキットに限らず、誰もが気軽に扱える天体望遠鏡が国内で流通しています。ただし、倍率の高さばかりをアピールするような、性能が不十分な望遠鏡も出回っていますので、購入を検討する際にはご注意ください(天体望遠鏡の性能を決めるのは倍率ではありません)。
国立天文台望遠鏡キットを使って天体観察する方法を解説した動画を公開中です。天体望遠鏡初級者向けに、小型望遠鏡の基本的な取り扱い方や天体導入のコツなどを丁寧に解説しています。
宵の明星・金星
夏至を過ぎ、次第に日の入りが早くなっていく夏、西空がオレンジに染まる夕焼けを、夕涼みをしながら楽しむ時期でもあります。日の入り後1時間半ほどの時間帯は、薄明(トワイライト)と呼ばれます。地平線の下から差す太陽の光が大気中で散乱されて、空の明るさと色合いが徐々に変化していきます。そんな素敵な西の低空に、宵の明星・金星が明るく輝いています。明るさは約マイナス4等級。1等星の100倍もの明るさです。
天体望遠鏡で眺めると、金星の形は、やや欠けているもののほぼ丸く見えます。しかし、12月に向けて地球との距離が近づいていくため、金星の形と大きさは次第に変化します。10月頃には半月状に、12月には三日月状にと少しずつ変わり、同じ倍率で観察を続けると、その大きさ(視直径)も徐々に大きくなっていくことに気づくでしょう。
土星の環を観察しよう
公開天文台や科学館などの天体観望会で、最も人気のある天体が土星です。でも、口径が5センチメートル以上の天体望遠鏡があれば、自宅にいても土星の環を簡単に確認することが可能です。現在やぎ座にある土星は、明るさが約0等級。1等星よりも少し明るいので見つけやすいことでしょう。8月2日に衝(しょう、地球から見て太陽の反対の方向にあり、真夜中に南中する)を迎え、一晩中観察できます。
木星の衛星を確かめよう
同様の小型望遠鏡で確認が可能なのが、木星の4大衛星(ガリレオ衛星)とその動き、そして本体の縞(しま)模様です。現在みずがめ座にある木星は、土星に遅れて昇ってきます。マイナス2等級より明るく、太陽系最大の惑星らしい堂々たる輝きです。きっと望遠鏡を向けるのに手間取ることはないでしょう。
木星は8月20日に衝を迎えますので、土星と共に11月頃まで望遠鏡を使っての観望を気軽に楽しむことができます。およそ400年前にガリレオ・ガリレイがスケッチしたように、木星の衛星の動きを確かめてみましょう。
関連リンク
文:縣 秀彦(国立天文台 天文情報センター)
出典:国立天文台ニュース