日米財界人会議開会式 – JPN
令和5年10月3日、岸田総理は、都内で開催された第60回日米財界人会議開会式に出席しました。
総理は、開会式の挨拶で次のように述べました。
「ただ今、御紹介にあずかりました、内閣総理大臣の岸田文雄です。日米財界人会議の開会式に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
この日米財界人会議は、今回で60回目を迎えられたと伺っております。実に半世紀以上にわたり、日米二国間の経済関係の強化に多大な貢献をされてこられました。長きにわたり休むことなく、そのような重要な役割を果たしてこられた。本会の運営に当たってこられた関係者の皆様方に深い敬意を表するとともに、今次会議の開会に当たり心からお祝いを申し上げる次第です。
2週間前、私はニューヨークを訪れ、第78回国連総会に出席いたしました。他国への侵略、気候変動、感染症など、国際社会が複合的な危機に直面する今、我々は法の支配に基づく国際秩序を確保し、分断・対立ではなくして、協調に向けた世界を創り出さなければなりません。これは本年を通じ、G7広島サミットを含む様々な機会において、私が一貫して強く主張してきたメッセージです。
今日の厳しい世界を前に、協調のための国際社会を実現するためには、人類全体で語れる共通の言葉が必要なのではないか、こうした考えから、今回の一般討論演説やSDGサミットにおいて、人間の生命(いのち)、尊厳が最も重要であるという、誰もが疑いようのない人類共通の原点に立ち戻り、人間の尊厳、これが守られる世界を目指すべきである、こういったことを強く訴えてまいりました。
こうした取組を進める上で、米国が日本にとって欠かせないパートナーであるということは、改めて申し上げるまでもありません。特に強固な日米関係の礎として、大きな役割を果たしておられるのが、この場にお集まりの日米双方の財界人の皆様方です。
日本は、4年連続世界最大の対米投資国であり、日系企業による対米直接投資残高は、直近10年で倍以上に増加しております。さらに、日系企業によって創出されている米国の雇用は、世界第2位であり、全米で96万人に達しております。日系企業は、それぞれの地域で経済のエンジンとなるだけでなく、そのモラルの高さと雇用の質の面からも、良き企業市民として、米国におけるコミュニティの発展や地域経済の成長に大きく寄与しています。
また、同様に米国から日本への投資を呼び込むことも重要です。先日、私はニューヨーク経済クラブにおいてスピーチをさせていただきました。ここにおいでのピーターソンさんにも大変お世話になりました。米国の経済界の方々に対して、新しい資本主義による日本経済の再生について、過去1年間の成果を振り返りながら、今後の取組についてもお話させていただきました。
もっとも、この日米経済関係は、二国間の貿易や投資のみに限られるものではありません。インド太平洋地域は、世界の人口の半数とGDP(国内総生産)の約6割を擁し、世界の成長と活力の原動力です。これからのインド太平洋の持続可能な成長、平和と繁栄を実現するために、率先してリーダーシップを発揮する責任を負っているのが日本と米国です。
昨年5月、私やバイデン大統領ら関係国の首脳は、ここ東京において、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の立ち上げを宣言いたしました。そして、日米を含む14か国のメンバーが、現在その交渉に取り組んでいます。地域の経済秩序に対する米国の関与は、ますます重要となっています。
このIPEFや環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)について、今後も日米間で意思疎通を続け、インド太平洋地域の経済秩序について、引き続き一緒に考えていきたいと思っています。
私が以上の点を強調する背景には、既存の国際秩序が力による一方的な現状変更の試みのみならず、経済的な影響力を不公正、不透明に行使し、自らの戦略的利益を実現しようとする試みによって、挑戦を受けているという日米の共通の危機感があります。
このインド太平洋地域の経済が、特定の国や地域に過度に依存しないサプライチェーンを構築し、経済的依存関係を武器化する経済的威圧を予防、回避すること、これが日米が共にインド太平洋地域の持続的・包摂的な経済成長を共に目指す上で避けることのできない戦略的な課題です。
本日、この後の会議を通じて、エネルギー安全保障、半導体や医薬品等のサプライチェーンの強靱(きょうじん)化、AI(人工知能)等のイノベーション促進等について、充実した議論の機会が予定されていると伺い、大変心強く思っています。是非、インド太平洋地域全体を視野に入れながら、活発な議論を行っていただけるよう願っております。
今回、皆様が策定される提言を心待ちにしつつ、今次会合が日米両国の更なる相互理解の促進に寄与することを祈念して、私の開会の御挨拶とさせていただきたいと存じます。御清聴、誠にありがとうございました。」
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出典:首相官邸ホームページ(当該ページのURL)